活動報告

2011年8月アーカイブ

名古屋市、浜松市 視察報告

●はじめに
2011年5月30日から31日まで、民主党川崎市議団は、名古屋市と浜松市に視察をおこなった。
3月11日に発生した東日本大震災を受け、川崎市における震災等の対策について再検証するため、東海地震・東南海地震対策などで、震災対策の先進地といわれる、名古屋市、浜松市両市の防災に対する取り組みを学習することが目的の視察である。

●参加者
東 正則、粕谷葉子、織田勝久、雨笠裕治、潮田智信、飯塚正良、山田益男、露木明美、吉田史子、添田 勝、押本吉司、木庭理香子

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●視察概要
第1日目 2011年5月30日 
名古屋市議会 委員会室にて
名古屋市議会事務局次長 金田利之様、議会局総務課 近藤様

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1.道路橋りょうの耐震化の取り組み
(説明 名古屋市緑政土木局道路建設課橋梁保全課)

■耐震化の目的:
耐震化の一番の目的は、いつ発生してもおかしくない東海・東南海地震に対する備えを主眼においている

■耐震化検討:
・阪神・淡路大震災での被災事例を参考にして対策を検討した。
・橋脚のタイプ別では一本柱、ラーメン柱式の橋脚は被災事例が多いので、それらを重点的に耐震化を図っている。
・橋梁の設計年度により、耐震性能は大きく異なるため、古い基準で建設されたものから優先に取り組んでいる。
    -耐震補強への具体的優先順位と取り組み基準と対象橋梁数
    (昭和55年道示より以前のものを最優先)

・本年度中に緊急性の高い56橋が完了予定(本年度予算3.4億円、対象4橋)
・耐震補強は橋脚の補強と落橋防止(桁と橋台)に二分される
・非常に古い橋梁(昭和2~6年完成)は耐震補強ができない→改築整備で取り組む

※名古屋市の橋について
名古屋市には1kmを超えるような長く大きな橋を始め、土木遺産に選定されるような橋、道路橋から鉄道橋に転換した120年を経た橋、小振りでも景観の顔となるような木製の橋まで多様な橋がある、とのこと。

2.水道基幹施設・配水管の耐震化について

■上下水道共通の前提条件:
・東海地震と東南海地震(および四国南側の南海地震の連動も想定)は連動して起こることを想定して事業の前提としている。
・耐震化に併せて水の送り方そのものも変えていくための工事(自流式に転換)も同時に取り組んでいる。
・鍋屋上野浄水場は緩速ろ過池であり、都市にはめずらしいシステムだが、名古屋のシンボルとして残しておきたい(薬品ではなく生物的な浄化システム)。
広く水をたたえた場所として維持する。

・平成15年以降は耐震管を採用(継ぎ手が抜けない:離脱防止機能、さらに折れない)。
・管は順次古いものから入れ替えている(年間110億 五カ年550億)。
・救急病院や市立小学校など重要給水管路の耐震化により命を守る(既にルートは完了)。
・水の販売も行い、家庭における水の備蓄にも取り組んでもらうよう促進している

3.下水道

■概要
・99%の下水道整備状況(川崎とほぼ同じ)
・15カ所の下水処理

■三連動地震(東海、東南海、南海地震)に対する備え:
・「自助」に対する備えの促進も不可欠(マンホール直結型の仮設トイレ)

■基幹施設の地震対策:
・過去の事例では土木構造物の被害はほとんど出ていない

■管きょの地震対策:
・入れ替えや内面補修をしている。
・埋め戻しの土が重要。改良した土は効果がある(汚泥焼却灰との混合)→液状化対策に効果的

■東日本大震災に対する支援:
・まず岩手(国からの要請)から実施。川崎市の支援とともに活動。


4.名古屋の防火&防災
(消防局防災部情報指令課)
東海・東南海・南海地震はいつ起きてもおかしくないものとして想定した対策をとる
名古屋市は、消防局に川崎市でいう危機管理室をおいている。

東海地震は唯一予測できる地震である→警戒宣言が出される 
徒歩帰宅支援マップは警戒宣言が出された際を想定して策定されている(全5枚 地域ごとに)

■災害についての基本的スタンス
・企業防災も大きな役割である(なまじ外に出るより社内に留まった方が安全な場合も多い)
(※川崎も夜間人口、昼間人口の差が激しい地域は考慮が必要)。
・災害に強い街は自助、共助、公助で助け合うことが重要である(公助だけでは限界がある)。
・地域コミュニティが助け合いの仕組みづくりの大きな力となる(阪神淡路大震災では助け出された人の8割が近所の人による救助)。
・名古屋市として、その助け合いの仕組みづくりを支援している。

■指令管制システムについて
 市民からの119番通報受付から、出動指令までをコンピューターシステムにより迅速に行うシステム。
 昭和53年に運用を開始してから、4度にわたるシステムの改修をおこない、新システムは平成23年度から運用を開始。

・119番通報から出動までをより速く、正確に
・故障することのない万全なバックアップ体制
・大規模災害発生時の通信量の増大に対応。電話以外のファクシミリやEメールによる通報も可。
・地震予測システムとの連動

■おもな質疑

○安否確認のとり組みは?
・住民の名簿づくりが一番大きな課題になっている。個人情報保護の面が仕組みづくりのハードルになっている。
・名簿がなくてもできる仕組みづくりを模索している。



第二日目 5月31日

10:00~
@浜松市役所
浜松市議会 議会事務局議事調査課 調査法制担当 主任 前嶋 卓志さま

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1.浜松市の防災対策について

■市の概要
・7つの行政区に分かれ、多岐な自然環境に恵まれている。
・自然環境を反映して、津波対策、土砂対策と防災対策も多岐に渡る。
・住民に外国人が多い(3.5%)ため、英語とポルトガル語を併記している。

■被害想定
県の大惨事被害想定により策定
現在、市として被害想定を明らかにし、それに向けた対策を講じことが急務と考える

■自主防災組織
自主防災訓練は実際には2/3程度しか実施されていない現状がある。
今後はもっと実施率を高め、いざというときに備えていきたい。

■帰宅困難者に対して
20キロ圏内からの通勤者が多いため。帰宅困難者対策として特別なことを整備しているわけではないか、大きな駅の周辺等では公共施設を活用して滞留者を保護する準備はしている。

2.要援護者支援計画について

浜松市 災害時要援護者支援計画
■計画策定背景
・阪神・淡路大震災からの教訓により、国から県への策定要請している。
・要援護者は健常者より避難に1時間以上の時間を要することを考慮しなければならない。
・洪水被害を契機として取り組んでいる。

■三連動大地震
・津波の被害想定は現在東海地震のみで推定されており、その件については危機感が大きくなっている。

■自助、共助、公助
・地震前と地震後にそれぞれ分けて、取り組み促進。

■市の補助制度
・家の耐震補強(昭和56年5月31日以前のものは倒壊の恐れが大きい)
・一敷地あたり30万円
・耐震評価低評価点 45万円
・その他条件により+20万円
・家具の固定補助
・身を守るための補助(防護フレームなど
・備蓄促進

■外国人向け
・各国後で書かれたコミュニケーションボードを利用している

■災害関連情報の取得
・浜松市防災メール(9つのジャンルから希望するお知らせメールが受け取れる)とFAX一斉送信サービスを併用している。
・ワンセグ(電源を必要としないテレビ)にはポテンシャル。

■災害時要援護者避難支援計画
・広義で自分の身を守りにくい人、助けが必要な人にたいしては個人台帳を作成して民生委員の協力を得て、体制を作っている。
・平成22年3月 17540人のうち、一人では避難が困難な6506人に対して重点的に支援体制の構築を推進している。
・日頃からの支援フロー(→添付資料参照)現在3年目のリスト作りをしている最中である。

■福祉避難所
・要援護者を二次的に受け容れる避難所で、福祉施設を運営する法人等と協定を締結した施設である。

・災害時、施設側の準備が整ったところで、一次避難所から福祉避難所へ(介護等を担う最低限の家族も)移している。

3.社会基盤施設の耐震化 上下水道

■上水道
配水管の耐震化は現在進めてはいるものの、優れた配水管は高額なため、なかなか浸透しない弱さがある(基幹管路の現在約47%)(ビニール管を使用)

15年間 470億円想定 →これができれば震災後一ヶ月間で復旧できる見込み
優先順位のウエイト付けを行いながら計画を推進中

耐震性貯水槽を学校や公演の地下に整備し、飲料水を確保


■下水道
下水道人口普及率は75.9%(約60万人)

地震対策の推進は緊急計画(平成20-24)と、中長期計画(平成25年-)
友人施設の耐震化は既に終了

処理場が津波被害を受けた場合、ストップしてしまう。耐震だけでなく津波対策
(高級処理ができなくても、まずは応急処理を)

計画停電対策も求められている(ポンプ能力)


■おもな質疑応答

○個人台帳作成の障壁の有無
民生委員が訪問することに対する同意を郵送にて予め確認
どうしてもイヤだという人については作成していない
台帳なくても民生委員が災害時の安否確認を行うことになっている

○可搬式ポンプの貸与制度
現状ではまだ実際の現場での使用報告はない
老朽化は大きな問題。入れ替えが追いついていない

○自主防災組織
消防団と自主防災組織とは構成員の重複は多い
ポンプを貸与しても、初期消火の対策としては水利と担当者の高齢化の問題。実際のところ、初期消火に役立つか否かは見えない。
中山間地では10世程度でひとつの自主防災組織になるエリアも多い。(お隣が500m先、というようなエリア)
中学生に対する訓練参加など学校の協力を得て、若い世代が関心を持てる仕組みを作る(昼間いるのは高齢者と学生)

○要援護者支援の防護フレームや人工呼吸器の非常用バッテリー
高額なため、昨年度の助成件数は0件

○県と政令市の大きな役割分担
防災に関しては全て県を通して行っているので、他の市とあまり大きな違いはない。
県の補助を受けて行っている(支援制度は全額県の補助)

○まずは自宅での避難生活が重要だと思うが、そこへの支援
まずは家具の倒壊防止と耐震を最優先に行っている

●考察

名古屋市においては、橋脚や上下水道管の耐震化などは、川崎市も遜色がない。
一方、川崎市が見習い、今後早急に取り組まなければならない課題もある。例えば、市民に向けた冊子、特に、警戒宣言が出された際を想定し策定されている帰宅支援マップには、各種避難場所(広域・一時・小中学校)、コンビニ・ガソリンスタンド、郵便局等、水補給やトイレなど借りることができる帰宅支援ステーションの表示のほか、帰宅方面ごとに新たな地図を配布する『案内場所』など、必要な情報が事細かく記載されている。さらに、各交通機関の折り返し予定駅までの乗り継ぎ方法の説明もあり、通勤通学客のみならず、買い物客や観光客など、たまたま訪れた人にとっても分かりやすい内容となっている。
また、上下水道は、取水場・浄水場・配水場など系列ごとに耐震化を進めると同時に、水の送り方そのものを自流式に変える施設や、創設期から稼働している老朽化した濾過池や配水地を残すなど、施設を一本化するのではなく工事を進めている。
避難所である各市立小学校に地下式給水施設の設置を推進し、さらにマンホール直結型仮設トイレを761基確保するなど、あらゆる点から地震対策に取り組んでいる。そして、災害に対する基本的スタンスとして、災害に強い街は自助・公助・共助が重要であると位置付け、それには地域コミュニティーが助け合いの仕組みづくりの大きな力になることから、市として、その仕組み作りを支援している、とのことであった。
 
浜松市では、住民に外国人が3.5%と他都市に比べ多いため、英語とポルトガル語の冊子や、各国語で書かれたコミュニケーションボードを用意している。ただ、他都市と異なり、20キロ圏内からの通勤者が多数を占めるため、帰宅困難者対策は特に講じていないが、大きな駅周辺等では、公共施設を活用し、滞留者を保護する準備は整っている。
また、避難場所として、自宅での避難が重要と考え、耐震化や家具の転倒防止を最優先に行っている。下水道普及率は75.9%。上水道の耐震化も基幹管路の47%という進捗率でなかなか進まないが、耐震性貯水槽を学校や公園の地下に整備し、飲料水の確保はできている。
 
以上、2都市の視察から、要援護者の取り組みについては、個人情報が阻害要因としておげられていたのが強く印象に残った。
 川崎市にあっても同様の現状がある。要援護者に具体的に担当支援者を割り当てる具体的なシステムの構築が急がれる。
 中学校を広域避難場所に指定するのは、同じだが、給水栓の確保とマンホールトイレの整備といった、より実践的なインフラ整備が整っているのは、川崎市として最大限に参考にしなくてはならない先進事例と思われた。